OZEKI 発酵ラボ

みんなのギモン 2020年5月22日

日本酒は太りやすいに異議あり! 酒粕成分の知られざる働き

日本酒に関する様々なギモンにお答えする「みんなのギモン」コーナー。今回は「日本酒はほかのお酒に比べてカロリーが高そうだけど、実際太りやすいの?」がテーマです。日本酒は好きだけど、メタボや健康が気がかりという方へ、耳寄りな情報をご紹介します。調べていく中で見えてきたのは、酒粕のチカラ。酒粕に含まれる成分が「ある物」と似た働きをするというのですが…さて、それは何なのか。続きは記事でご確認ください。

日本酒のカロリーって!?

日本酒は太りやすいと聞くことが多いものの、そもそもどれくらいのカロリーがあるのかご存知ですか? 日本酒(普通酒)の場合、1合(約180ml)で約190kcalです。主にアルコール分に由来するという日本酒のカロリー。アルコールは、糖質、脂質、たんぱく質といったほかの栄養素と異なり、体に蓄えられにくいカロリーと言われています。とは言うものの、食欲増進作用があるお酒を飲むと、ついつい食べすぎて過剰にカロリーを摂ってしまうことも…結果としてそれが内臓脂肪や皮下脂肪へと変化。肥満の原因になるので要注意です。

脂肪は脂肪でも内臓脂肪がメタボへの道

肥満=脂肪がついている状態ですが、女性は皮下脂肪たっぷりの洋なし型肥満、男性は内臓脂肪がつきやすいりんご型肥満が多いと言われています。皮下脂肪は、左の図のように皮膚と筋肉の間に脂肪がついている状態。内臓脂肪は、右の図のようにおなかの内臓周辺に脂肪が多くついています。高血糖や脂質異常、高血圧を引き起こすメタボリックシンドロームの原因のひとつは、内臓脂肪。その目安は、ウエスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上です。健康診断の結果が気になっている方は、日本酒などの飲酒にご注意ください。飲みすぎると中性脂肪が増え、内臓脂肪や皮下脂肪を増やすことにもなります。適量そして適度な飲酒生活を心がけましょう。

日本酒の副産物・酒粕の要注目成分

内臓脂肪や皮下脂肪が原因で太らないためにも、日本酒の飲みすぎはNGです。ところが、日本酒の副産物である酒粕には、興味深い成分が含まれていることがわかりました。酒粕とはその名の通り、日本酒の残りかす。日本酒づくりの過程でできるもろみから、液体をしぼって残った固形物のことです。ビタミンB群やアミノ酸といった栄養素が豊富な酒粕は、メディアでも話題となっています。甘酒の材料としても使われていますよね。
その酒粕の成分の中で特に要注目の成分が「レジスタントプロテイン」です。「かす」と呼ぶにはもったいないほど、健康に役立つとして様々なチカラが確認されています。

酒粕由来の濃縮レジスタントプロテインとは

さて、レジスタントプロテイン。どんな成分なのかというと、食物繊維のような働きをします。食物繊維といえば、こんにゃくや海藻類、豆類、きのこ類などに含まれる炭水化物の一種。体内の消化酵素で分解されることなく、そのまま排出される成分です。レジスタントプロテインはたんぱく質ですが、炭水化物の一種である食物繊維のような働きをするのです。
この酒粕に含まれるレジスタントプロテインを、酵母で再発酵させることにより濃縮した「酒粕由来の濃縮レジスタントプロテイン」が開発されています(上の図参照)。日本酒の発酵技術を駆使して濃縮したことで、酒米に比べてレジスタントプロテインが約13倍、食物繊維が約57倍増加しました。いくつかの研究を重ねた結果、酒粕から生まれた濃縮レジスタントプロテインは、様々なチカラをもっていることもわかってきています。

どうやって摂取する?酒粕の摂り方

レジスタントプロテインをはじめ栄養豊富な酒粕。摂取する場合、そのまま食べるという方もいらっしゃるでしょうが、おすすめは甘酒です。適量は1日約2.5杯。酒粕からつくることもできますが、手軽に楽しむなら酒粕由来の甘酒商品もありますよ。もちろん粕汁などの料理に酒粕を使ってもよいでしょう。その場合の酒粕摂取量の目安は、1日約50g*です。そのほかに、酒粕由来の濃縮レジスタントプロテインが含まれたサプリメントも販売されています。ご自身に合った摂取の仕方で、毎日の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

*参考文献 : 日本醸造協会誌 107(5) 282-291

まとめ

日本酒は太りやすいというギモンを掘り下げていくと、食欲増進作用による食べ過ぎと飲み過ぎによる中性脂肪が太る原因であることがわかりました。ところが日本酒の副産物・酒粕には興味深い成分が! 酒粕に含まれるたんぱく質「レジスタントプロテイン」が食物繊維のような働きをし、さらにそれを濃縮した成分に様々なチカラがあることもわかってきたのです。とはいえ、日本酒と酒粕を同時に…となると脂肪が行ったり来たりしそうですね。そうならないためにも、飲酒習慣に気をつけながら、酒粕を適量に摂取してそのチカラを感じてください。